相続人からの相談
ある日、
お客さんからの電話
「すいません、ちょっと聞きたいんですけど
亡くなった父が、消費者金融からお金を借りてたみたいなんですけど、これって過払い請求できるんですか?」
「勿論できますよ。少し詳しく話してください。お父様が最後にお取引をした時期はわかりますか?」
「ちょっとわかりません。相手の業者も正確にはわからないんです。」
「お亡くなりになったのはいつですか?」
「亡くなったのは5年ほど前です。」
「最終取引日から10年以内であれば原則請求できます。」
(最終取引日から10年経過すると法的に消滅時効が完成してしまい、請求する権利が無くなってしまう)
「相手方が正確にわからないんですけど。」
「やみくもに受任通知(貸金業者に特定の依頼者から債務整理を委任されたことを通知する書面、受任通知が業者に到達すると業者は貸金の請求を本人に対して行うことはできなくなる)を発送するわけにもいかないんで、何か業者がわかるような書面資料とか残ってないですか?」
「書面は全く残ってなくて、ただ、大手の業者で有名な会社です」
「唯一わかっていたのが武○○なんですけど、こちらは、TV見て自分で直接連絡しました」
「ア○○ですか?」
「違います」
「プ○○スですか?」
「あ、そうです。」
「あと、私が電話を受けた会社で信販会社なんですけど」・・・
だいたいのやりとりで、ある程度貸金業者は特定できた。
後は受任通知発送だ。
受任通知は、通常取引履歴の開示請求も同一書面に記載されていて、取引履歴の開示請求書ともなる。
「亡くなった方が死亡したことを証する書面」を添付して相続人名義で取引履歴の開示請求ができる。
具体的には亡くなった方の除籍謄本と、請求者が相続人であることを証するために(請求者兼相続人の)戸籍謄本を添付する。
ある程度目安をつけた業者から、亡くなった方の取引履歴が送られてきた。
履歴を引き直し計算したところ、過払い金が算定された。
最終取引日は、10年近くまえだが、時効が完成するまで、あと、半年くらいある。
ぎりぎりセーフ、やれやれだ。
相続人からの過払い請求をするにあたって
相続人の特定と相続分の確定
「お父様の相続人はAさん(依頼人)以外にいらっしゃいます?」
「相続人てどこまでですかね?」
「Aさんはご兄弟はいらっしゃいますか?」
「はい、姉(B)と弟(C)がいます」
「お母さまはご健在ですか?」
「はい」
「それでは相続人の方は、お母様とAさん、Bさん、Cさんとなります。
ご兄弟とお母様との間で今回の過払い金の取り分について話し合ってますか?」
「いえ、特には、・・・話し合って決めないといけないのですか?」
「相続人同士で自己の取り分について話し合って決めることもできますし(遺産分割協議)
法定の相続分どおりで各自の(法定の)取り分で納得するということ(法定相続)もできます。」
「法定だとどうなりますか?」
「お母様が1/2、Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ1/6づつということになります」
「母や兄弟と話してみます。
その後の展開はどうなりますか?」
「それでは、過払い金を請求する場合に訴訟になった場合ですが、「なくなられた方の相続人全員」から請求する場合・・・・@
と相続人全員で話し合って特定の人に権利を承継してもらって(遺産分割協議)
その人から請求する場合・・・A
また、@の場合、ある特定の人を訴訟手続きを遂行していく人を指定して手続きを進めていくようにする場合(選定当事者、民事訴訟法30条1項)、
また、事情により、自分の取り分のみの権利について自分のみで訴訟を提起する
{相続財産が可分(金銭等)の場合、原則個別に請求可
その場合、その請求者の相続分を証明する書面が必要となる。
不可分
の場合(例えば「飼っていた猫」とか分けることができない場合)は原則全員からの請求が必要}等いろいろあります。
また、業者に訴訟前に請求する場合は亡くなった方の亡くなった事の証書(除籍謄本)
そして亡くなった方の全相続人からの請求かどうかの確認のためになくなった方が生まれてから亡くなるまでの、全戸籍謄本が必要です。」
「生まれてから死ぬまでの全部の戸籍が必要なんですか?」
「そうです。一部の戸籍謄本だけだと相続人が全部揃ってるのかわからないし、後から「私は相続人だ」と出てきた場合に権利関係(に基づく配当)をもう一度やりなおさないといけなくなります。
」
「父は、○○県で生まれて○○県に移転してその後○○都で死亡したので、それでは、3つの県から戸籍をとらなくちゃいけませんね。」
「転籍手続きを移転の都度していればそうなります。また、婚姻により新たに戸籍を作ったりした場合に戸籍が変わる(増える)ことになります。」
「そして、その全ての戸籍が揃ったら、その戸籍を読んで、(何度か)結婚しているかまた結婚していないけれども他にこどもがいないかを調べます。」
「結婚してないばあいにこどもがいたら、戸籍に載るんですか?」
「そうです。婚外子のことですが、法律上は非嫡出子といいます」
(ただし、当然ですが出生の届出を役所に出していない場合は戸籍に載りません」)
「そして
Aさん、Bさん、Cさん以外にご子息がいた場合、そのご子息がどうなっているか戸籍を取っていきます。例えば、死亡していたり、他の人の養子になっていたりとか、現在存命中かどうかわかります」
「私でも他の相続人(異母兄弟)の戸籍を取れるんですか?」
「お互い、相続人同士だし、血縁関係があるので、役所で取得が可能ですが、現在、個人情報に関する保護が厳しくなっていて、役所によっては、直系血族以外の親族(親子以外の身内、兄弟とか)の戸籍は取得できない役所もあるようです。
(以上は司法書士の経験から、役所によって依頼者が同一でも取得できない役所、できる役所がある)
事前に役所に問い合わせてください。」
「順番はどうやればいいですか?」
「まず、お亡くなりになったところの役所で生前の戸籍をとった場合、
戸籍の冒頭に「○年○月○日F市役所から転籍届出」と書かれてあれば、そのF市役所にいって戸籍を取得する、その戸籍にまた冒頭にかかれてあればその役所に取りに行くとさかのぼっていきます。」
その後、しばらくして・・・・
「戸籍とってきました。大変でした。父の戸籍を全部揃えると12枚になりました。」
「戸籍の様式は何度か改正されているので、現在の戸籍、改正される前の戸籍(改正原戸籍)等を集めないといけないので、1通ですまない場合が多いのです。
まして、何度か本籍の転籍された方は、その都度戸籍が変わりますから更に多くなります。」
「様式が変わったといっても従前の記録は全て新しいものに移ってないんですか?」
「全てが移ってないです。改正時○市に戸籍があって現時点のデータはありますが、それ以前の記録は改正前のものに載ってるので、改正後のものではわかりません」
「お父様の戸籍を見ると、現在のお母様と結婚する前に、他の方と結婚、離婚されてますね。」
「そうなんです。私もはじめて知りました」
「そのときのご子息がDさん、E
さんがいらっしゃいますね。そうするとまた、
Dさん、Eさんの戸籍も取らないと・・」
「前妻のFさんはとらなくていいんですか?」
「前妻はお父様の相続人とならないから取らなくていいです」
・・・・・・・・・・・
「とりましたよ。Dさんのと、そしてEさんは亡くなってるみたいですよ。」
「どれどれ、そうですね。Eさんはご結婚してらして、ご子息がいらっしゃいますね。
亡くなった日がお父様の亡くなった日より、後ですね。その後ご子息が生まれてますので、このGさん、HさんがE
さんの相続人であり、お父様の(過払い請求の)権利のうちEさんの取得分を相続しています。」
(上の事例では、亡父がなくなった後に、G、Hが生まれ、その後、Eが死亡している。)
「
Eさんの奥さんのIさんは相続人にならないのですか?」
「お父様がお亡くなりになる以前に離婚しているので、相続人とはなりません」
相続人が未成年の場合
「もし、相続人のなかに未成年者がいる場合は、法定代理人を選任してそのかたが未成年者の代わりに遺産分割協議を行います。
通常、その方の親権者がなる場合が多いです。
もし、その代理人自身が自分も遺産分割協議に参加する場合(その代理人も相続人である場合、利益相反になるので、家庭裁判所に特別代理人の選任
を申立て、家庭裁判所が選任した特別代理人が未成年者の代理行為をします。
Hさんは今月20歳になっているので、代理人をつけることは必要ないですね。」
「ところで、また、
Gさん、Hさんの戸籍を取らないといけないのですね」
「そうです」
「とりました。これで全相続人が出揃ったわけですね」
「お父様の戸籍の全記録を見ると・・・・そうですね。これで全員です」
「あとはどうしたらいいですか?」
「まずは、新たにわかった相続人のDさん、Gさん、H
さんに今回の権利の相続人であることを伝えて、その権利を承継(うけつぐ)するか放棄するか意思の確認
をしましょう。」
「全員が権利を取得すると相続分はどうなりますか?」
「法定相続分で言うとお母さまのJさんが6/12、Aさん、Bさん、Cさん、D
さん、
Gさん、Hさんがそれぞれ1/12となります。」
相続人が行方不明の場合
「もし、Dさんとかに連絡がつかなかったりするとどうなりますか?」
「例えば、Dさんが居場所がわからない場合、住民票上の住所に存在していない場合、従来の住所、居所(住所ではないが居住している場所、例単身赴任者等の一時的な居住地等)を去り容易に戻る見込みがない者(法律上、不在者という。民法25条)
であれば、「不在者の財産管理人」という管理者を利害関係人や検察官から家庭裁判所に選任するよう申し立てる事ができます。その管理人をD
さんの権利を行使できますから、その管理人に相続の件を確認することになります。」
相続人の意思確認
「Dさんとかに連絡取りたい場合は、戸籍の住所に連絡するのですか?」
「戸籍謄本の本籍地は行政(市区町村)上の所在地の表記とは異なるので、住民票の住所を見ないといけません。」
「住民票上の住所はどうやって調べるのですか?」
「それは戸籍の附表をとれば、そこに住民票の住所の記載があります」
その後、
相続人の一部が請求権を放棄する場合
「なんとか苦労して連絡取れました。
Dさんは(相続分を)放棄するって言いました。
Gさん、Hさんは相続するって言いました。」
「それでは、Dさんの権利の放棄の書面を作ってもらってもいいですが、相続人全員で遺産分割協議したうえで、『遺産分割協議書』
を作成してもいいです。」
「Gさんは北海道、Hさんは鹿児島、Dさんは長崎に住んでるのですが・・・」
「一同に会さなくても書面をまわしてもいいですから」
相続人が権利を放棄する場合
以下の方法がある。
「相続放棄申述受理報告書」
相続人が被相続人からの一切のプラス財産(資産等)マイナス財産(借金等)を放棄する場合、家庭裁判所への申述により行う。
「遺産分割協議書」で遺産を取得しない旨の記載をしたり、自らその遺産について
「放棄書面」を作成する(遺産のなかの特定の財産についてのみ放棄するということになる)
遺産分割協議書の作成要領
「遺産分割協議書ってどんなこと記載しなくちゃいけないのですか?」
必要なことは
、
@遺産を特定
(具体的に○○の権利、もしくは現金○円、○○の土地
等のように表す)
A被相続人の記載(亡くなった方)
B相続人全員が協議に参加していること
C相続人の取り分等を記載
しなければいけないですね」
「?・・・・・・」
相続人からの過払い請求の訴状
「訴状を作るときはどうするの?」
「訴状に証拠として『相続証明書』(亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本
、相続人全員の戸籍謄本
)
『遺産分割協議書』(相続人全員の署名のある遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、同じく住民票)を添付すれば過払い請求権者の
Kさんが亡くなった事、
Kさんの相続人が誰と誰であること、
K
さんの相続人が全員で遺産分割協議書を作っていること、遺産分割協議書に誰が相続分の取り分をどのくらいとるのかが証明されるので、相続人からKさんの過払い
金の請求ができるということ。」
「最後に一つ、例えば相続人
Jが1/2を取得するとした場合に、過払い金の合計額が
¥235,481円とかって割り切れない数字であった場合、訴状にはどう書くの?」
「その場合は○○円50銭とかって現在通用されてない通貨単位を記載することはできないので、最終単位は柔軟性が認められている。
例えば総額が50万1円だった場合、Aさんが1/2、Bさんが1/4、Cさんが1/4
だった場合、Aさんが25万1円、Bさんが12万5000円、C
さんが12万5000円というように記載して請求してよい
(Bさんが12万5001円で、Aさんが25万円でもよい)
(司法書士の実務経験から・・東京簡易裁判所での実務対応による。
訴訟提起する裁判所に事前に問い合わせてください。)」
※ご自身で過払い請求をされている方からの質問やご相談についての対応はしていません。
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